5.3. カスタムビルド

カスタムビルドストラテジーにより、開発者はビルドプロセス全体を対象とする特定のビルダーイメージを定義できます。独自のビルダーイメージを使用することにより、ビルドプロセスをカスタマイズできます。

カスタムビルダーイメージは、RPM またはベースイメージのビルド用などの、ビルドプロセスロジックで組み込まれた単純な Docker 形式のコンテナーイメージです。

カスタムビルドは非常に高いレベルの権限で実行されるため、デフォルトではユーザーが利用することはできません。クラスター管理者のパーミッションを持つ信頼できるユーザーのみにカスタムビルドを実行するためのアクセスが付与される必要があります。

5.3.1. カスタムビルドの FROM イメージの使用

customStrategy.from セクションを使用して、カスタムビルドに使用するイメージを指定できます。

手順

customStrategy.from セクションを設定するには、以下を実行します。

strategy:
  customStrategy:
    from:
      kind: "DockerImage"
      name: "openshift/sti-image-builder"

5.3.2. カスタムビルドでのシークレットの使用

すべてのビルドタイプに追加できるソースおよびイメージのシークレットのほかに、カスタムストラテジーを使用することにより、シークレットの任意の一覧をビルダー Pod に追加できます。

手順

各シークレットを特定の場所にマウントするには、以下を実行します。

strategy:
  customStrategy:
    secrets:
      - secretSource: 1
          name: "secret1"
        mountPath: "/tmp/secret1" 2
      - secretSource:
          name: "secret2"
        mountPath: "/tmp/secret2"
1
secretSource は、ビルドと同じ namespace にあるシークレットへの参照です。
2
mountPath は、シークレットがマウントされる必要のあるカスタムビルダー内のパスです。

5.3.3. カスタムビルドの環境変数の使用

環境変数をカスタムビルドプロセスで利用可能にするには、環境変数を BuildConfigdockerStrategy 定義に追加できます。

ここに定義された環境変数は、カスタムビルドを実行する Pod に渡されます。

手順

ビルド時に使用されるカスタムの HTTP プロキシーを定義するには、以下を実行します。

customStrategy:
...
  env:
    - name: "HTTP_PROXY"
      value: "http://myproxy.net:5187/"

クラスター管理者は、Ansible を使用してグローバルビルドを設定することもできます。

oc set env コマンドで、BuildConfig に定義した環境変数を管理することも可能です。

5.3.4. カスタムビルダーイメージの使用

ビルドプロセス全体を行う固有のビルダーイメージを定義できるように、OpenShift Container Platform のカスタムビルドストラテジーは、コンテナーイメージの作成がよく使用されるようになり、できた差を埋めるために設計されました。ビルドが個別のアーティファクト (パッケージ、JAR、WAR、インストール可能な ZIP およびベースイメージなど) を生成する必要がある場合には、カスタムビルドストラテジーを使用する カスタムビルダーイメージ の使用により、この要件を満たすことができます。

カスタムビルダーイメージは、RPM またはベースのコンテナーイメージの構築など、ビルドプロセスのロジックに組み込まれるプレーンなコンテナーイメージです。

さらに、カスタムビルダーは、単体または統合テストを実行する CI/CD フローなどの拡張ビルドプロセスを実装できます。

カスタムのビルドストラテジーの利点を完全に活用するには、必要なオブジェクトをビルド可能なカスタムビルダーイメージの作成方法を理解する必要があります。

5.3.4.1. カスタムビルダーイメージ

呼び出し時に、カスタムのビルダーイメージは、ビルドの続行に必要な情報が含まれる以下の環境変数を受け取ります。

表5.2 カスタムビルダーの環境変数

変数名説明

BUILD

Build オブジェクト定義のシリアル化された JSON すべて。シリアル化した中で固有の API バージョンを使用する必要がある場合は、ビルド設定のカスタムストラテジーの仕様で、buildAPIVersion パラメーターを設定できます。

SOURCE_REPOSITORY

ビルドするソースが含まれる Git リポジトリーの URL

SOURCE_URI

SOURCE_REPOSITORY と同じ値を仕様します。どちらでも使用できます。

SOURCE_CONTEXT_DIR

ビルド時に使用する Git リポジトリーのサブディレクトリーを指定します。定義された場合にのみ表示されます。

SOURCE_REF

ビルドする git 参照

ORIGIN_VERSION

このビルドオブジェクトを作成した OpenShift Container Platform のマスターのバージョン

OUTPUT_REGISTRY

イメージをプッシュするコンテナーイメージレジストリー

OUTPUT_IMAGE

ビルドするイメージのコンテナーイメージタグ名

PUSH_DOCKERCFG_PATH

podman push または docker push 操作を実行するためのコンテナーレジストリー認証情報へのパス

5.3.4.2. カスタムビルダーのワークフロー

カスタムビルダーイメージの作成者は、ビルドプロセスを柔軟に定義できますが、ビルダーイメージは、OpenShift Container Platform 内でビルドがシームレスに実行されるように必要とされる以下の手順に従う必要があります。

  1. Build オブジェクト定義に、ビルドの入力パラメーターの必要情報をすべて含める。
  2. ビルドプロセスを実行する。
  3. ビルドでイメージが生成される場合には、ビルドの出力場所が定義されていれば、その場所にプッシュする。他の出力場所には環境変数を使用して渡すことができます。