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10.6. systemd のユニットファイルの作成および変更

ユニットファイルには、ユニットを説明し、その動作を定義する設定ディレクティブが含まれます。複数の systemctl コマンドがバックグラウンドでユニットファイルと連携します。詳細な調整を行うには、システム管理者がユニットファイルを手動で編集または作成する必要があります。表10.2「systemd のユニットファイルの場所」 には、システムにユニットファイルが保存される 3 つのメインディレクトリーが記載されています。/etc/systemd/system/ ディレクトリーは、システム管理者が作成またはカスタマイズするユニットファイル用に予約されます。

ユニットファイル名は、以下のフォーマットを使用します。

unit_name.type_extension

unit_name はユニットの名前を表し、type_extension はユニットタイプを識別します。ユニットタイプの完全なリストは、表10.1「利用可能な systemd のユニットタイプ」 を参照してください。たとえば、通常は、システムには sshd.service ユニットおよび sshd.socket ユニットがあります。

ユニットファイルには、追加の設定ファイルのディレクトリーを追加できます。たとえば、カスタム設定オプションを sshd.service に追加するには、sshd.service.d/custom.conf ファイルを作成し、追加のディレクティブを挿入します。設定ディレクティブの詳細情報は、「既存のユニットファイルの変更」 を参照してください。

さらに、sshd.service.wants/ ディレクトリーおよび sshd.service.requires/ ディレクトリーを作成することもできます。このディレクトリーには、sshd サービスの依存関係であるユニットファイルへのシンボリックリンクが含まれます。シンボリックリンクは、[Install] ユニットファイルオプションに従ってインストール時に自動的に作成されるか (表10.11「[Install] セクションの重要なオプション」 を参照)、または [Unit] オプションに基づいてランタイム時に自動的に作成されます (表10.9「[Unit] セクションの重要なオプション」 を参照)。このディレクトリーとシンボリックリンクを手動で作成することもできます。

多くのユニットファイルオプションは、いわゆる ユニット指定子 を使用して設定できます。これは、ユニットファイルが読み込まれる際にユニットパラメーターに動的に置き換えられるワイルドカード文字列です。これにより、インスタンス化されたユニットを生成するテンプレートとしてのロールを担う汎用ユニットファイルを作成できます。詳しくは 「インスタンス化されたユニットの使用」 を参照してください。

10.6.1. ユニットファイル構造の概要

通常、ユニットファイルは 3 つのセクションで設定されています。

  • [Unit]: ユニットのタイプに依存しない汎用的なオプションが含まれます。このセクションに含まれるオプションはユニットを説明し、ユニットの動作を指定し、他のユニットへの依存関係を設定します。最も頻繁に使用される [Unit] オプションのリストは、表10.9「[Unit] セクションの重要なオプション」 を参照してください。
  • [unit type]: ユニットにタイプ固有のディレクティブがある場合、それらはユニットタイプに基づいて名前が付けられるセクションにグループ分けされます。たとえば、サービスユニットファイルには [Service] セクションが含まれます。最もよく使われる [Service] オプションは 表10.10「[Service] セクションの重要なオプション」 を参照してください。
  • [Install]: systemctl enable コマンドおよび disable コマンドで使用されるユニットインストールに関する情報が含まれます。[Install] オプションのリストは、表10.11「[Install] セクションの重要なオプション」 を参照してください。

表10.9 [Unit] セクションの重要なオプション

オプション[a] セクション、systemd.unit(5) man ページ]詳細

説明

ユニットの説明です。このテキストは、たとえば systemctl status コマンドの出力に表示されます。

Documentation

ユニットのドキュメントを参照する URI のリストを提供します。

After[b]

ユニットが開始する順序を定義します。このユニットは、After で指定されたユニットがアクティブになると開始します。Requires とは異なり、After は、指定したユニットを明示的にアクティブにしません。Before オプションには、After と機能が反対になります。

Requires

その他のユニットに依存関係を設定します。Requires にリスト表示されるユニットは、対応するユニットと共にアクティブになります。必要なユニットのいずれかが開始しないと、このユニットはアクティブになりません。

Wants

Requires よりも強度の弱い依存関係を設定します。リストに示されるユニットのいずれかが正常に開始しなくても、このユニットのアクティべーションには影響を与えません。これは、カスタムのユニット依存関係を設定する際に推奨される方法です。

Conflicts

Requires と反対の依存関係 (負の依存関係) を設定します。

[a] [Unit] で設定可能なオプションの完全リスト
[b] ほとんどの場合、ユニットファイルオプションの After および Before で依存関係の並び順を設定するだけで十分です。Wants (推奨) または Requires で要件の依存関係も設定する場合は、依存関係の並び順を指定する必要があります。これは、並び順と要件の依存関係が相互に依存していないためです。

表10.10 [Service] セクションの重要なオプション

オプション[a] セクション、systemd.service(5) の マニュアルページを参照してください。]詳細

Type

ExecStart および関連オプションの機能に影響を与えるユニットプロセスの起動タイプを設定します。以下のいずれかになります。

* simple - デフォルト値です。ExecStart で起動するプロセスは、サービスのメインプロセスです。

* forking - ExecStart で起動するプロセスは、サービスのメインプロセスになる子プロセスを起動します。親プロセスは、このプロセスが完了すると終了します。

* oneshot - このタイプは simple と似ていますが、結果として生じるユニットを起動する前に終了します。

* dbus - このタイプは simple と似ていますが、メインプロセスが D-Bus 名を取得する前に、結果として生じるユニットが起動します。

* notify - このタイプは simple と似ていますが、結果として生じるユニットは、通知メッセージが sd_notify() 関数で送信されないと起動しません。

* idle - simple と似ていますが、サービスバイナリーの実行は、すべてのジョブが終了するまで行いません (遅らせます)。 これにより、ステータスの出力とサービスのシェル出力を分けることができます。

ExecStart

ユニットの開始時に実行するコマンドまたはスクリプトを指定します。ExecStartPre および ExecStartPost は、ExecStart の前後に実行するカスタムコマンドを指定します。Type=oneshot を使用すれば、連続して実行する複数のカスタムコマンドを指定できます。

ExecStop

ユニットの停止時に実行するコマンドまたはスクリプトを指定します。

ExecReload

ユニットの再読み込み時に実行するコマンドまたはスクリプトを指定します。

Restart

このオプションを有効にすると、systemctl コマンドによる完全な停止の例外により、そのプロセスの終了後にサービスが再起動します。

RemainAfterExit

True に設定すると、サービスは、そのプロセスがすべて終了していてもアクティブと見なされます。デフォルトの値は False です。このオプションは、特に Type=oneshot が設定されている場合に役に立ちます。

[a] [Service] で設定可能なオプションの完全リスト

表10.11 [Install] セクションの重要なオプション

オプション[a] セクション、systemd.unit(5) man ページ]詳細

Alias

ユニット名の追加リストを、スペース区切りで提供します。systemctl enable を除くほとんどの systemctl コマンドでは、ユニット名ではなくエイリアスを使用できます。

RequiredBy

そのユニットに依存するユニットのリストです。このユニットが有効な場合に、RequiredBy にリスト表示されるユニットは、このユニットに関する Require 依存関係を取得します。

WantedBy

このユニットへの依存が弱いユニットのリストです。このユニットが有効になると、WantedBy にリスト表示されるユニットが、このユニットに関する Want 依存関係を取得します。

Also

対応するユニットと共にインストールまたはアンインストールされるユニットのリストを指定します。

DefaultInstance

インスタンス化されているユニットだけが対象となりますが、このオプションは、ユニットが有効になっているデフォルトのインスタンスを指定します。「インスタンス化されたユニットの使用」 を参照してください。

[a] [Install] で設定可能なオプションの完全リスト

ユニット設定の調整に使用できるさまざまなオプションは、例10.17「postfix.service ユニットファイル」 では、システムにインストールされているサービスユニットの例を示しています。さらに、ユニットファイルのオプションは、「インスタンス化されたユニットの使用」 に説明されているようにユニットの動的な作成が可能な方法で定義できます。

例10.17 postfix.service ユニットファイル

次に、postfix パッケージで現在提供されている /usr/lib/systemd/system/postfix.service ユニットファイルの内容が続きます。

[Unit]
Description=Postfix Mail Transport Agent
After=syslog.target network.target
Conflicts=sendmail.service exim.service

[Service]
Type=forking
PIDFile=/var/spool/postfix/pid/master.pid
EnvironmentFile=-/etc/sysconfig/network
ExecStartPre=-/usr/libexec/postfix/aliasesdb
ExecStartPre=-/usr/libexec/postfix/chroot-update
ExecStart=/usr/sbin/postfix start
ExecReload=/usr/sbin/postfix reload
ExecStop=/usr/sbin/postfix stop

[Install]
WantedBy=multi-user.target

[Unit] セクションは、サービスについて説明し、競合するユニットおよび並び順依存関係を指定します。[Service] には、ユニットのアクティブ化の実行時、停止時、および再ロード時に、一連のカスタムスクリプトを実行するように指定します。EnvironmentFile は、サービスの環境変数が定義する場所を指定し、PIDFile は、サービスのメインプロセスに安定した PID を指定します。最後に、[Install] セクションはサービスに依存するユニットをリスト表示します。

10.6.2. カスタムユニットファイルの作成

ユニットファイルをゼロから作成するための複数のユースケースがあります。カスタムデーモンの実行、一部の既存のサービスのセカンドインスタンスの作成 (例10.19「sshd サービスの 2 つ目のインスタンスの作成」)、または SysV init スクリプト (「SysV Init スクリプトのユニットファイルへの変換」) のインポートを行うことができます。一方、既存のユニットの動作を変更または拡張する場合は、「既存のユニットファイルの変更」 の手順を使用します。以下の手順では、カスタムサービスを作成する一般的なプロセスを説明します。

  1. カスタムサービスで実行可能なファイルを用意します。カスタムで作成されたスクリプトや、ソフトウェアプロバイダーが提供する実行ファイルがこれにあたります。必要な場合は、カスタムサービスのメインプロセスの PID を保持するため、PID ファイルを用意します。また、サービスのシェル変数を保存するために環境ファイルを組み込むこともできます。(chmod a+x を実行して) ソーススクリプトが実行でき、インタラクティブではないことを確認してください。
  2. /etc/systemd/system/ ディレクトリーにユニットファイルを作成し、ファイルに適切なパーミッションがあることを確認します。root で以下のコマンドを実行します。

    touch /etc/systemd/system/name.service
    chmod 664 /etc/systemd/system/name.service

    name を、作成するサービスの名前に置き換えます。ファイルには実行権限が必要ありません。

  3. 上の手順で作成した name.service ファイルを開き、サービス設定オプションを追加します。作成するサービスのタイプに応じて、さまざまなオプションを使用できます。「ユニットファイル構造の概要」 を参照してください。以下は、ネットワーク関連サービスのユニットの設定例になります。

    [Unit]
    Description=service_description
    After=network.target
    
    [Service]
    ExecStart=path_to_executable
    Type=forking
    PIDFile=path_to_pidfile
    
    [Install]
    WantedBy=default.target

    詳細は以下のようになります。

    • service_description は、ジャーナルログファイルおよび systemctl status コマンドの出力に表示される役立つ説明です。
    • After 設定により、このサービスは、ネットワークが実行してから起動します。関連するサービスまたはターゲットは、スペースで区切って追加します。
    • path_to_executable は、サービス実行ファイルへのパスを表します。
    • Type=forking は、fork システム呼び出しを行うデーモンに使用します。サービスのメインプロセスは、path_to_pidfile で指定した PID で作成されます。その他の起動タイプは 表10.10「[Service] セクションの重要なオプション」 を参照してください。
    • WantedBy では、サービスを起動するターゲットを指定します。ターゲットは、従来のランレベル概念の代替と見なすことができます。詳細は 「systemd ターゲットでの作業」 を参照してください。
  4. root で以下のコマンドを実行すると、新しい name.service ファイルが存在することが、systemd に通知されます。

    systemctl daemon-reload
    systemctl start name.service
    警告

    新しいユニットファイルを作成したり、既存のユニットファイルを修正したら常に systemctl daemon-reload コマンドを実行します。このコマンドを実行しないと、systemd のステータスと、ディスクの実際のサービスユニットファイルが一致しなくなるため、systemctl start コマンドや systemctl enable コマンドが失敗します。

    name.service ユニットは、「システムサービスの管理」 に説明通りにコマンドでその他のシステムサービスとして管理できます。

例10.18 emacs.service ファイルの作成

Emacs テキストエディターを使用する場合は、ファイルの編集時にプログラムの新規インスタンスを起動するよりも、バックグラウンドで実行する方がスピードが速いため便利です。以下の手順では、Emacs のユニットファイルを作成し、これをサービスのように処理する方法を説明します。

  1. /etc/systemd/system/ ディレクトリーにユニットファイルを作成し、ファイルパーミッションが正しいことを確認してください。root で以下のコマンドを実行します。

    ~]# touch /etc/systemd/system/emacs.service
    ~]# chmod 664 /etc/systemd/system/emacs.service
  2. 以下の内容をファイルに追加します。

    [Unit]
    Description=Emacs: the extensible, self-documenting text editor
    
    [Service]
    Type=forking
    ExecStart=/usr/bin/emacs --daemon
    ExecStop=/usr/bin/emacsclient --eval "(kill-emacs)"
    Environment=SSH_AUTH_SOCK=%t/keyring/ssh
    Restart=always
    
    [Install]
    WantedBy=default.target

    上記の設定では、サービスの起動時に、/usr/bin/emacs 実行ファイルがデーモンモードで開始します。SSH_AUTH_SOCK 環境変数は、ランタイムディレクトリーを表す %t ユニット指定子で設定されます。また、emacs プロセスが予期せずに終了した場合は、このサービスによりこれが再開します。

  3. 以下のコマンドを実行して、設定の再読み込みを行い、カスタムサービスを開始します。

    ~]# systemctl daemon-reload
    ~]# systemctl start emacs.service

これでエディターは systemd サービスとして登録されるため、標準的な systemctl コマンドがすべて使用できます。たとえば、systemctl status emacs でエディターのステータスを表示したり、systemctl enable emacs でシステム起動時にエディターを自動的に起動したりできます。

例10.19 sshd サービスの 2 つ目のインスタンスの作成

システム管理者は、サービスのインスタンスを複数設定し、実行しなければならないことが多々あります。これは、サービスの主なインスタンスとの競合を避けるために、元のサービス設定ファイルのコピーを作成し、特定のパラメーターを変更することで実行します。以下の手順は、sshd サービスの 2 つ目のインスタンスを作成する方法を示しています。

  1. 2 つ目のデーモンで使用する、sshd_config ファイルのコピーを作成します。

    ~]# cp /etc/ssh/sshd{,-second}_config
  2. 作成した sshd-second_config ファイルを編集し、2 つ目のデーモンに別のポート番号と PID ファイルを割り当てます。

    Port 22220
    PidFile /var/run/sshd-second.pid

    Port オプションおよび PidFile オプションの詳細は、man ページの sshd_config(5) を参照してください。他のサービスで使用されていないポートを選択してください。PID ファイルはサービスの実行時に存在していなければいけないものではありません。存在しない場合は、サービスの起動時に自動的に生成されます。

  3. sshd サービスの systemd ユニットファイルのコピーを作成します。

    ~]# cp /usr/lib/systemd/system/sshd.service /etc/systemd/system/sshd-second.service
  4. 作成した sshd-second.service を以下のように変更します。

    1. Description オプションを変更します。

      Description=OpenSSH server second instance daemon
    2. After オプションを指定するサービスに sshd.service を追加し、最初のインスタンスが起動した場合に限り 2 つ目のインスタンスが起動するようにします。

      After=syslog.target network.target auditd.service sshd.service
    3. sshd の最初のインスタンスには鍵の生成が含まれるため、ExecStartPre=/usr/sbin/sshd-keygen 行を削除します。
    4. sshd コマンドに -f /etc/ssh/sshd-second_config パラメーターを追加して、代替の設定ファイルが使用されるようにします。

      ExecStart=/usr/sbin/sshd -D -f /etc/ssh/sshd-second_config $OPTIONS
    5. 上記のように変更すると、sshd-second.service は以下のようになります。

      [Unit]
      Description=OpenSSH server second instance daemon
      After=syslog.target network.target auditd.service sshd.service
      
      [Service]
      EnvironmentFile=/etc/sysconfig/sshd
      ExecStart=/usr/sbin/sshd -D -f /etc/ssh/sshd-second_config $OPTIONS
      ExecReload=/bin/kill -HUP $MAINPID
      KillMode=process
      Restart=on-failure
      RestartSec=42s
      
      [Install]
      WantedBy=multi-user.target
  5. SELinux を使用している場合は、sshd の 2 番目のインスタンスのポートを SSH ポートに追加します。追加しないと、sshd の 2 番目のインスタンスがポートにバインドされません。

    ~]# semanage port -a -t ssh_port_t -p tcp 22220
  6. システムの起動時にこのサービスが自動的に起動するように、sshd-second.service を有効にします。

    ~]# systemctl enable sshd-second.service

    systemctl status コマンドを使用して sshd-second.service が実行中かどうかを確認します。さらに、ポートをサービスに接続して、適切に有効になっているかどうかを確認します。

    ~]$ ssh -p 22220 user@server

    ファイアウォールを使用している場合は、sshd の 2 番目のインスタンスへの接続を許可するように適切に設定されていることを確認してください。

カスタムユニットファイルの並び順および依存関係のターゲットを適切に選択する方法は、以下の Red Hat ナレッジベースの記事を参照してください。

ユニットファイルの並び順および依存関係にトリガーされたケースの実例の一部と追加情報は、Is there any useful information about writing unit files? を参照してください。

systemd が開始するサービスへの制限の設定は、Red Hat ナレッジベースの記事 RHEL 7 および systemd でサービスに制限を設定する を参照してください。この制限は、サービスのユニットファイルで設定する必要があります。systemd は、/etc/security/limits.conf 設定ファイルおよび /etc/security/limits.d/*.conf 設定ファイルに設定した制限を無視する点に注意してください。このファイルに定義した制限は、ログインセッションの開始時に PAM により設定されますが、systemd が開始するデーモンは、PAM ログインセッションを使用しません。

10.6.3. SysV Init スクリプトのユニットファイルへの変換

SysV init スクリプトをユニットファイルに変換する前に、すでに別の場所で変換が行われていないことを確認します。Red Hat Enterprise Linux 7 にインストールされるすべてのコアサービスにデフォルトのユニットファイルが同梱されていますが、数多くのサードパーティーソフトウェアパッケージにも同様のことが言えます。

init スクリプトをユニットファイルに変換するには、スクリプトを分析し、そこから必要な情報を抽出することが必要になります。このデータに基づいて、「カスタムユニットファイルの作成」 の説明通りにユニットファイルを作成できます。init スクリプトはサービスのタイプによって大きく異なるため、この章で概略されているよりも多くの設定オプションの変換を使用しなければならない場合もあります。init スクリプトで利用できるカスタマイズの一部のレベルは systemd ユニットでサポートされなくなっていることに注意してください。「互換性の変更点」 を参照してください。

変換に必要とされるほとんどの情報はスクリプトのヘッダーに提供されます。以下の例は、Red Hat Enterprise Linux 6 で postfix サービスを起動するために使用される init スクリプトの開始セクションになります。

#!/bin/bash
#
# postfix   Postfix Mail Transfer Agent
#
# chkconfig: 2345 80 30
# description: Postfix is a Mail Transport Agent, which is the program \
#       that moves mail from one machine to another.
# processname: master
# pidfile: /var/spool/postfix/pid/master.pid
# config: /etc/postfix/main.cf
# config: /etc/postfix/master.cf

### BEGIN INIT INFO
# Provides: postfix MTA
# Required-Start: $local_fs $network $remote_fs
# Required-Stop: $local_fs $network $remote_fs
# Default-Start: 2 3 4 5
# Default-Stop: 0 1 6
# Short-Description: start and stop postfix
# Description: Postfix is a Mail Transport Agent, which is the program that
#       moves mail from one machine to another.
### END INIT INFO

上記の例では、# chkconfig および # description で始まる行のみが必須になり、init ファイルによってはその他の記載はない可能性もあります。# BEGIN INIT INFO# END INIT INFO 行に囲まれたテキストは Linux Standard Base (LSB) ヘッダー と呼ばれています。LSB ヘッダーを指定している場合は、サービスの説明、依存関係、およびデフォルトのランレベルを定義するディレクティブがこれに含まれます。次に、新規のユニットファイルに必要なデータを収集する分析タスクの概要が続きます。postfix init スクリプトはサンプルとして使用されます。作成される postfix ユニットは 例10.17「postfix.service ユニットファイル」 を参照してください。

サービス説明の検索

#description で始まる行で、スクリプトに関する説明情報を確認します。この説明は、サービス名と共に、ユニットファイルの [Unit] セクションの Description オプションで使用します。LSB ヘッダーの #Short-Description 行および #Description 行に同様のデータが含まれる場合があります。

サービス依存関係の検索

LSB ヘッダーには、サービス間の依存関係を形成する複数のディレクティブが含まれる場合があります。そのほとんどは systemd ユニットオプションに変換できます。表10.12「LSB ヘッダーの依存関係オプション」 を参照してください。

表10.12 LSB ヘッダーの依存関係オプション

LSB オプション説明同等のユニットファイル

Provides

サービスの起動ファシリティー名を指定します。この名前は他の init スクリプトで参照できます ( "$" 接頭辞を使用)。ただし、ユニットファイルが他のユニットをファイル名で参照できるようになったため、これは不要になりました。

Required-Start

必要なサービスの起動ファシリティー名が含まれます。これは、並び順の依存関係として変換され、起動ファシリティー名は、対応するサービスまたはそのサービスが属するターゲットに置き換えられます。たとえば、postfix の場合、$network の Required-Start 依存関係は、network.target の After 依存関係に変換されました。

AfterBefore

Should-Start

Required-Start よりも弱い依存関係を設定します。Should-Start 依存関係が失敗しても、サービスの起動には影響を及ぼしません。

AfterBefore

Required-StopShould-Stop

負の依存関係を設定します。

Conflicts

サービスのデフォルトターゲットの検索

#chkconfig で始まる行には 3 つの数値があります。最も重要な値は最初の数値で、サービスが起動するデフォルトのランレベルを示しています。これらのランレベルを同等の systemd ターゲットにマップするには、表10.6「SysV ランレベルと systemd ターゲットの比較」 を使用します。次に、そのターゲットを、ユニットファイルの [Install] セクションの WantedBy オプションに記述します。たとえば、postfix はこれまではランレベル 2、3、4、および 5 で起動しました。これは、Red Hat Enterprise Linux 7 では multi-user.target と graphical.target に変換されます。ただし、graphical.target は multiuser.target に依存するため、例10.17「postfix.service ユニットファイル」 の説明にあるように、両方を記述する必要はありません。また、LSB ヘッダーの #Default-Start および #Default-Stop 行に、デフォルト、および動作するべきでないランレベルの情報がある場合は、そちらも参照してください。

#chkconfig 行で指定した他の 2 つの値は、init スクリプトの起動およびシャットダウンの優先順位を表します。この値は、init スクリプトが読み込まれる場合は systemd により解釈されますが、同等のユニットファイルはありません。

サービスで使用されるファイルの検索

init スクリプトでは、専用ディレクトリーから関数ライブラリーを読み込み、設定ファイル、環境ファイル、および PID ファイルのインポートを許可します。環境変数は init スクリプトヘッダーの #config で始まる行で指定し、EnvironmentFile ユニットファイルオプションに変換されます。#pidfile init スクリプト行に指定した PID ファイルは、PIDFile オプションでユニットファイルにインポートされます。

init スクリプトヘッダーに含まれない主要な情報は、サービス実行ファイルへのパス、またはサービスで必要になる可能性のあるその他のファイルへのパスです。以前のバージョンの Red Hat Enterprise Linux では、init スクリプトは、カスタム定義のアクションと共に 起動停止再起動 などのデフォルトアクションのサービスの動作を定義する Bash ケースステートメントを使用しました。postfix init スクリプトからの以下の抜粋は、サービス起動時に実行するコードのブロックを示しています。

conf_check() {
  [ -x /usr/sbin/postfix ] || exit 5
  [ -d /etc/postfix ] || exit 6
  [ -d /var/spool/postfix ] || exit 5
}

make_aliasesdb() {
	if [ "$(/usr/sbin/postconf -h alias_database)" == "hash:/etc/aliases" ]
	then
		# /etc/aliases.db might be used by other MTA, make sure nothing
		# has touched it since our last newaliases call
		[ /etc/aliases -nt /etc/aliases.db ] ||
			[ "$ALIASESDB_STAMP" -nt /etc/aliases.db ] ||
			[ "$ALIASESDB_STAMP" -ot /etc/aliases.db ] || return
		/usr/bin/newaliases
		touch -r /etc/aliases.db "$ALIASESDB_STAMP"
	else
		/usr/bin/newaliases
	fi
}

start() {
	[ "$EUID" != "0" ] && exit 4
	# Check that networking is up.
	[ ${NETWORKING} = "no" ] && exit 1
	conf_check
	# Start daemons.
	echo -n $"Starting postfix: "
	make_aliasesdb >/dev/null 2>&1
	[ -x $CHROOT_UPDATE ] && $CHROOT_UPDATE
	/usr/sbin/postfix start 2>/dev/null 1>&2 && success || failure $"$prog start"
	RETVAL=$?
	[ $RETVAL -eq 0 ] && touch $lockfile
    echo
	return $RETVAL
}

init スクリプトの拡張性により、start() 関数ブロックから呼び出される conf_check() および make_aliasesdb() の 2 つのカスタム関数を指定することができました。さらに詳しくみると、上記コードでは外部のファイルおよびディレクトリーが複数記述されています (主なサービス実行ファイル /usr/sbin/postfix、設定ディレクトリー /etc/postfix//var/spool/postfix/、および /usr/sbin/postconf/ ディレクトリー) 。

systemd は、事前に定義されたアクションのみをサポートしますが、オプションの ExecStartExecStartPreExecStartPostExecStopExecReload でカスタムの実行ファイルを有効にできます。Red Hat Enterprise Linux 7 の postfix の場合、/usr/sbin/postfix はサポートスクリプトと共に、サービスの起動時に実行されます。postfix ユニットファイルの詳細は、例10.17「postfix.service ユニットファイル」 を参照してください。

複雑な init スクリプトを変換する際には、スクリプトのすべてのステートメントの目的を理解している必要があります。一部のステートメントはオペレーティングシステムのバージョンに固有のものであるため、そのステートメントを変換する必要はありません。一方、新規の環境では、サービス実行ファイルおよびサポートファイルやユニットファイルで調整が一部必要となる場合があります。

10.6.4. 既存のユニットファイルの変更

システムにインストールされるサービスは、/usr/lib/systemd/system/ ディレクトリーに保存されるデフォルトのユニットファイルと共に提供されます。システム管理者はこのファイルを直接変更できないため、カスタマイズは /etc/systemd/system/ ディレクトリーの設定ファイルに制限される必要があります。必要とされる変更の程度に応じて、以下の方法のいずれかを実施してください。

  • 補助設定ファイルのディレクトリーを /etc/systemd/system/unit.d/ に作成します。この方法は、ほとんどのユースケースで推奨されます。これにより、元のユニットファイルを参照しつつも、デフォルト設定を追加の機能で拡張できます。この場合、パッケージのアップグレードで導入されるデフォルトユニットへの変更は自動的に適用されます。詳細は、「デフォルトのユニット設定の拡張」 を参照してください。
  • 元のユニットファイル /usr/lib/systemd/system/ のコピーを /etc/systemd/system/ に作成し、そこで変更を行います。コピーは元のファイルを上書きするため、パッケージの更新で導入される変更は適用されません。この方法は、パッケージの更新とは無関係に永続する重要なユニット変更を行う際に役に立ちます。詳しくは 「デフォルトのユニット設定の上書き」 を参照してください。

ユニットのデフォルト設定に戻るには、/etc/systemd/system/ でカスタム作成した設定ファイルを削除します。システムを再起動せずにユニットファイルへの変更を適用するには、以下を実行します。

systemctl daemon-reload

daemon-reload オプションは、すべてのユニットファイルを再読み込みし、ユニットファイルへの変更をすぐに適用するのに必要な依存関係ツリー全体を再作成します。別の方法として、次のコマンドで同じ結果を得ることができます。

init q

変更したユニットファイルが実行中のサービスに属する場合は、このサービスを再起動して新たな設定を反映させる必要があります。

systemctl restart name.service
重要

SysV init スクリプトが処理しているサービスのプロパティー (依存関係やタイムアウトなど) を変更するときは、init スクリプト自体は変更しないでください。代わりに、「デフォルトのユニット設定の拡張」「デフォルトのユニット設定の上書き」 にあるように、サービスの systemd ドロップイン設定ファイルを作成します。その後、通常の systemd サービスと同じ方法でサービスを管理します。

たとえば、network サービスの設定を拡張するときは、init スクリプトファイル /etc/rc.d/init.d/network を変更しないでください。代わりに、新しいディレクトリー /etc/systemd/system/network.service.d/ と、systemd ドロップインファイル /etc/systemd/system/network.service.d/my_config.conf を作成します。そして、ドロップインファイルの値を変更します。systemd は、network サービスを network.service として認識することに注意してください。作成したディレクトリーが network.service.d と命名されるのはそのためです。

デフォルトのユニット設定の拡張

追加の設定オプションでデフォルトのユニットファイルを拡張するには、最初に /etc/systemd/system/ に設定ディレクトリーを作成します。サービスユニットを拡張する場合は、root で以下のコマンドを実行します。

mkdir /etc/systemd/system/name.service.d/

name を、拡張する必要のあるサービスの名前に置き換えます。上記の構文はすべてのユニットタイプに適用されます。

作成したディレクトリーに設定ファイルを作成します。ファイル名の接尾辞は .conf にする必要があることに注意してください。以下のコマンドを実行します。

touch /etc/systemd/system/name.service.d/config_name.conf

config_name を、設定ファイルの名前に置き換えます。このファイルは、通常のユニットファイル構造に基づくため、すべてのディレクティブは該当するセクションで指定する必要があります。「ユニットファイル構造の概要」 を参照してください。

たとえば、カスタムの依存性を追加するには、以下の内容で設定ファイルを作成します。

[Unit]
Requires=new_dependency
After=new_dependency

new_dependency は、依存性としてマークが付けられるユニットを表します。次の例は、30 秒の遅延後のメインプロセス終了後にサービスを再起動する設定ファイルです。

[Service]
Restart=always
RestartSec=30

1 つのタスクだけを扱う簡単な設定ファイルを作成することが推奨されます。これにより、他のサービスの設定ディレクトリーに簡単に移動したり、リンクできます。

そのユニットに行った変更を適用するには、root で以下のコマンドを実行します。

systemctl daemon-reload
systemctl restart name.service

例10.20 httpd.service 設定の拡張

Apache サービスの起動時にカスタムシェルスクリプトが自動的に実行されるように httpd.service ユニットを変更するには、以下の手順で行います。まず、ディレクトリーおよびカスタム設定ファイルを作成します。

~]# mkdir /etc/systemd/system/httpd.service.d/
~]# touch /etc/systemd/system/httpd.service.d/custom_script.conf

Apache で自動的に起動するスクリプトが /usr/local/bin/custom.sh にある場合は、以下のテキストを custom_script.conf ファイルに追加します。

[Service]
ExecStartPost=/usr/local/bin/custom.sh

ユニットの変更を適用するには、以下を実行します。

~]# systemctl daemon-reload
~]# systemctl restart httpd.service
注記

/etc/systemd/system/ の設定ディレクトリーの設定ファイルは、/usr/lib/systemd/system/ のユニットファイルに優先します。そのため、設定ファイルに、一度だけ指定できるオプション (DescriptionExecStart など) が含まれる場合は、このオプションのデフォルト値が上書きされます。「上書きされたユニットの監視」 で説明されているように、systemd-delta コマンドの出力では、一部のオプションは実際に上書きされますが、該当のユニットは常に [EXTENDED] とマークされます。

デフォルトのユニット設定の上書き

ユニットファイルを提供するパッケージの更新後も変更を持続させるには、最初にファイルを /etc/systemd/system/ ディレクトリーにファイルをコピーします。それを行うには、root で以下のコマンドを実行します。

cp /usr/lib/systemd/system/name.service /etc/systemd/system/name.service

name は、変更するサービスユニットの名前を表します。上記の構文はすべてのユニットタイプに適用されます。

コピーされたファイルをテキストエディターで開き、必要な変更を行います。ユニットの変更を適用するには、root で以下のコマンドを実行します。

systemctl daemon-reload
systemctl restart name.service

例10.21 タイムアウト制限の変更

サービスごとにタイムアウト値を指定すると、正常に動作していないサービスによってシステムがフリーズすることを防ぐことができます。タイムアウト値を指定しないサービスには、通常のサービスの場合は 90 秒、そして SysV と互換性のあるサービスの場合は 300 秒と、それぞれデフォルトのタイムアウトが設定されています。

たとえば、httpd サービスのタイムアウト制限を延長するときは、以下を行います。

  1. httpd ユニットファイルを、/etc/systemd/system/ ディレクトリーにコピーします。

    cp /usr/lib/systemd/system/httpd.service /etc/systemd/system/httpd.service
  2. /etc/systemd/system/httpd.service ファイルを開き、[Service] セクションに TimeoutStartSec 値を指定します。

    ...
    [Service]
    ...
    PrivateTmp=true
    TimeoutStartSec=10
    
    [Install]
    WantedBy=multi-user.target
    ...
  3. systemd デーモンを再ロードします。

    systemctl daemon-reload
  4. 任意です。新しいタイムアウト値を確認します。

    systemctl show httpd -p TimeoutStartUSec
注記

グローバルでタイムアウト制限を変更するには、/etc/systemd/system.conf ファイルの DefaultTimeoutStartSec を変更します。「systemd の概要」を参照してください。

上書きされたユニットの監視

上書きされたユニット、または変更したユニットファイルの概要を表示するには、以下のコマンドを実行します。

systemd-delta

上記のコマンドを実行すると、以下のような出力になります。

[EQUIVALENT] /etc/systemd/system/default.target → /usr/lib/systemd/system/default.target
[OVERRIDDEN] /etc/systemd/system/autofs.service → /usr/lib/systemd/system/autofs.service

--- /usr/lib/systemd/system/autofs.service   2014-10-16 21:30:39.000000000 -0400
+++ /etc/systemd/system/autofs.service 2014-11-21 10:00:58.513568275 -0500
@@ -8,7 +8,8 @@
 EnvironmentFile=-/etc/sysconfig/autofs
 ExecStart=/usr/sbin/automount $OPTIONS --pid-file /run/autofs.pid
 ExecReload=/usr/bin/kill -HUP $MAINPID
-TimeoutSec=180
+TimeoutSec=240
+Restart=Always

 [Install]
 WantedBy=multi-user.target

[MASKED]   /etc/systemd/system/cups.service → /usr/lib/systemd/system/cups.service
[EXTENDED]  /usr/lib/systemd/system/sssd.service → /etc/systemd/system/sssd.service.d/journal.conf

4 overridden configuration files found.

表10.13「systemd-delta の相違タイプ」 は、systemd-delta の出力で表示される上書きタイプをリスト表示します。ファイルが上書きされると、systemd-delta が、diff コマンドの出力に似た変更の要約をデフォルトで表示します。

表10.13 systemd-delta の相違タイプ

Type詳細

[MASKED]

マスクされたユニットファイルです。ユニットマスクの説明は、「サービスの無効化」 を参照してください。

[EQUIVALENT]

このコピーは、元のファイルを上書きしますが、コンテンツは変更されません。通常はシンボリックリンクです。

[REDIRECTED]

別のファイルにリダイレクトするファイルです。

[OVERRIDEN]

上書きされ、変更されたファイルです。

[EXTENDED]

/etc/systemd/system/unit.d/ ディレクトリーの .conf ファイルで拡張されているファイルです。

[UNCHANGED]

--type=unchanged オプションが使用される場合にのみ表示される、変更されていないファイルです。

システムの更新後に、systemd-delta を実行して、デフォルトユニットに対してカスタム設定で上書きした更新があるかどうかを確認できます。さらに、出力する更新を、特定のタイプに制限することもできます。たとえば、上書きされたユニットのみを表示するには、以下のコマンドを実行します。

systemd-delta --type=overridden

10.6.5. インスタンス化されたユニットの使用

ランタイム時に、1 つのテンプレート設定ファイルから複数のユニットをインスタンス化できます。@文字は、テンプレートにマークを付け、ユニットをこれに関連付けるために使用されます。インスタンス化されたユニットは、(Requires オプションまたは Wants オプションを使用して) 別のユニットから開始することも、systemctl start コマンドで開始することもできます。インスタンス化されたサービスユニットの名前は以下のような形式となります。

template_name@instance_name.service

ここで、template_name は、テンプレート設定ファイルの名前になります。instance_name を、ユニットインスタンスの名前に置き換えます。複数のインスタンスが同じテンプレートファイルを参照し、このテンプレートには、ユニットの全インスタンスに共通する設定オプションが含まれます。テンプレートユニットの名前には以下の形式が使用されます。

unit_name@.service

たとえば、ユニットファイルに次の Wants 設定を指定すると、

Wants=getty@ttyA.service,getty@ttyB.service

この設定により、systemd が、最初に指定したサービスユニットを検索します。該当するユニットが見つからないと、@とタイプ接尾辞の間にある部分は無視され、systemd が getty@.service ファイルを検索し、そこから設定を読み取り、サービスを起動します。

ワイルドカード文字 (ユニット指定子 とも呼ばれる) を、すべてのユニット設定ファイルで使用できます。ユニット指定子は、特定のユニットパラメーターを置き換え、ランタイム時に解釈されます。表10.14「重要なユニット指定子」 は、特にテンプレートユニットで便利なユニット指定子をリスト表示します。

表10.14 重要なユニット指定子

ユニット指定子意味説明

%n

完全ユニット名

タイプ接尾辞を含む完全ユニット名を表します。%N には同じ意味がありますが、禁止文字を ASCII コードに置き換えます。

%p

接頭辞名

タイプ接尾辞が削除されたユニット名を表します。インスタンス化されたユニットの %p は、ユニット名の@文字の前の部分を表します。

%i

インスタンス名

インスタンス化されたユニット名の@文字およびタイプ接尾辞間の部分です。%I には同じ意味がありますが、禁止文字を ASCII コードにも置き換えます。

%H

ホスト名

ユニット設定を読み込んだ時に稼働しているシステムのホスト名を表します。

%t

ランタイムディレクトリー

ランタイムディレクトリーを表します。これは、root ユーザーの /run、または非特権ユーザーの XDG_RUNTIME_DIR 変数の値になります。

ユニット指定子の詳細なリストは、man ページの systemd.unit(5) を参照してください。

たとえば、getty@.service テンプレートには以下のディレクティブが含まれます。

[Unit]
Description=Getty on %I
...
[Service]
ExecStart=-/sbin/agetty --noclear %I $TERM
...

上記のテンプレートから getty@ttyA.service および getty@ttyB.service をインスタンス化する場合、Description= は Getty on ttyA および Getty on ttyB として解決されます。